「Jカーブ」について考える
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「Jカーブ」について考える

アドベントカレンダー2記事目です。

9月ぐらいに「kameikeさんってJカーブ好きですよね」と同僚の方に言われてから、確かに僕はJカーブが好きかもしれないと思って、Jカーブについて考えてみたいと常々思っていました。

そんなJカーブが僕の中で優先順位が上がるわけもなく、日々の仕事に忙殺されていました。エンジニアリング本部の忘年会も終わり、諸々ひと段落したため、3時間ぐらいJカーブについて考えてみたことを書きます。

そもそも「Jカーブ」とは、特定の変化が初期には一時的な悪化をもたらすが、時間が経つにつれて改善し、最終的には出発点よりも良い状態になる状況を指します。この現象がグラフ上で「J」の字の形に似ていることから名付けられました。要するに、「しゃがんで伸ばす」という行為です。

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日々の仕事で出会うJカーブたち

品質と生産性

品質と生産性の改善にJカーブはよく出てくるように感じます。

デザインペイオフライン」設計にコストを払うことで、生産性や品質に対してJカーブを描きます。皆様の愛読スライドである質とスピードの引用(引用の引用となっており恐縮です)にも、「4回で自動テストと手動テストのコストが逆転する」という話があり、こちらも「テストを書くことが、生産性に対してJカーブを描く」と表現できます。

採用やチーム編成

チームを編成したり、新しい人がチームに入ったタイミングで生産性は落ち、チームが馴染んでいく中で、タックマンモデルの形成期→混乱期→統一期→機能期までの流れを時間軸のグラフに沿ってみると、Jカーブの形となります。

設備投資

SaaSの導入やツールの入れ替え、パソコンの買い替え、リアーキテクチャリング、エディタの乗り換えなども同じようにJカーブを描きます。

人の成長

一つ前の記事で詳しく書いているのですが、人が成長する過程にも、ビジネス的な成果に対して生産性が落ちるタイミングがあり、ここにもJカーブが出てくるなと感じています。

Jカーブのライフサイクル

時間軸に対してグラフぽいものが出てくると、微分(詳しくなくても大丈夫です)してみることでその性質を考えるヒントになるように感じています。Jカーブを微分すると「Jカーブを作る能力」の変化を見ることができ、下記の図のようになります。

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この図を観察し、少し言語化してみます。

まずは、今の「手なり運用」のやり方を捨てて問題を起こすところから始まります。今まで出ているやり方を止め、進捗と成果を窓から投げ捨てましょう。この時点では、微分値≒「価値を生む能力」はマイナスであり、問題が起きている状態となります。明確に問題が起きており「今までのやり方」の方が良かったのではないか?という疑念が頭をよぎります。

その後、価値を生む能力が0を超えた時点で、問題は収束し、新しいやり方が進捗を生み始め、ここからやっと希望の光が見えるようになります。ただしJカーブを描くためには「手なり運用」よりもより多く進捗を出すラインを超える必要があります。

価値を生む能力を高めていく中で、「Jカーブの微分値≒価値を生む能力」「手なり運用の能力」を超える点を迎えます。図の中の「A地点」となっているところです。おめでとうございます。ここまで来たらあとは時間の問題です。 「Jカーブ」が生む価値が「手なり運用」よりも角度がつくことによって、一定時間経過後図中の「B地点」に辿り着き、ついに手なり運用を超える「成果」を得ることができます。

(補足: 微分を考えている中で、僕がJカーブが好きと言われる理由がわかった気がしており、基本的に僕は変化が好きなので、Jカーブ好きなんでしょうねとなりました。)

Jカーブをいかによく描くか?

Jカーブを微分しつつ、性質がわかってきたので、Jカーブを目指す際の観点を考えてみました。

長期のビジョン

Jカーブを作る際に、「この変化で『手なり運用』を超えることができる」という確信を持って取り組む必要、図中A地点やB地点に到達する確信と仮説を持つ必要があります。

今までのやり方をやめてわざわざ問題を起こすところから始まるため、将来の確信をビジョンとして組織の確信に変えていく必要があります。

検査と適応

Jカーブを描く際に「A地点」を超えられない限り、徒労に終わります。そして「A地点」は「B地点」よりも手前にきます。そのため改善している対象を明確にして、「手なり運用」に対してアウトパフォームしてるか?というのは計測し続ける必要があります。

忍耐・グリット力

最初のネガティブな変化を起こす際に、色々なものが問題になります。文句を言う人が出てきたり、怒られたり、時には査定が悪くなったりと、色々とネガティブな地点が発生します。諦めず耐えて、試行錯誤し、向き合っていく必要があると考えています。

透明性

Jカーブを描くには透明性が組織の基盤となります。将来の状態や現在の見立てを理解することができなければ単に闇雲な迷走に見えますし、検査と継続的な改善ができるだけの透明性がなければJカーブの状態を把握し適切な変化を生んでいるのかを知る術がなくなります、

学習や能力への投資

Jカーブの「A地点」に辿り着くには、能力の向上が大切になります。できる限り早く「A地点」に辿り着くことが全体のRoIを左右するため、能力向上と学習に対して積極的な組織である必要があります。

おまけ

Jカーブの2階微分も考えてみましたが時間が足りずで、これをどう解釈するかについて考えたかったのですが、ここで時間切れを迎えました。

1階微分が「生産能力」とした際は2階微分は「知識の増分」というところかなと思っています。この形はシグモイド関数(ロジスティック関数)を微分したものに似ているなと思っているので、そこの領域からアナロジーを引っ張ってくるような知識の探索をすると、また面白いインサイトが出てくるかもなと思いました。

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kameikeはJカーブ初心者なので、もしかして本記事を読んでいただいた方にJカーブ中級者以上の方(もっとモデル化してるものを知っている方)がいらっしゃったら、Xでリプなど投げつけていただくとJカーブについて理解が深まり嬉しいなと思います。